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永遠なる無駄遣い


永遠なる無駄遣い
コートダジュール、パリ 1997

(9)パリ - 5/6


<インターコンチ・ホテルと日本人女性バイオリン弾きの売り込み>

 今日は、やけにノドが乾く、とても暑い一日となった。オランジェリーを後にし、インターコンチ・ホテル前まで来たら、中庭のカフェがおいでおいでをしているように思えて、ふらぁと中へ。宝石かなにかの商談らしき男女の横を擦り抜け、1階のフロントを右手に見ながら、中を1周してみる。反対側に回ったところで、バイオリンの調べ。うーん。それもプロの腕。見ると中庭のカフェで何やら品評会なのか、オーディションなのか。一先ず、咽の乾きを潤すため、その側の座席に着席。先ほどの宝石商談の男女が中庭の噴水の反対側でヒソヒソ話をしている以外は、バイオリンの一団(6名)と私だけ。けだるい午後のひとときである。

 定点観測というかこの場合は、「家政婦は見た」状況なのだが、観察結果はつぎの通り。バイオリンを弾いていたのは、天才バイオリニストの後藤ミドリの年令も骨格も二回り大きくした東洋系の謎の美女。たぶん日本人。最初は師匠格(バイオリン集団はこの師匠を中心に会話が構成されていた)或いは売り込み先の前に立って弾いていた。つぎに、音の出方が自分の思う通りに出ていないのか、やおら立ち上がり、全員を背にスラスラと弾く。でも売り込み相手の師匠格のフランス人(芸術肌の方)が、何かとアドバイス。もっとこう表現しろとか、厳しいお言葉。で、バイオリニストには中国系のプロモーター(ボクシングで言うならばドンキング)みたいな人がついていて、もう一人は黒人系の小柄な中年おばさま、立場は不明。師匠格には、作曲家か指揮者らしき人が側に。もうひとりは付き人か雑用専門で、携帯電話を持ってきたり、ジュースを注文したり。

 師匠格のフランス訛りの英語がチラホラ聞こえてくる。「今回は残念だが、チェンスはやる。少し、私の所で練習をつけろとか、つけないとか。」「今直ぐ電話して、同意するか確認をとれとか??」うーん、小説みたいですね、またまた。で、彼女は、電話で何処かに連絡。嬉しいやら、少し悔しいやら、でもチェンスを掴んだような顔つきで、先に帰って良いと言われ、さっそうとホテルの外へ。

 ふむふむ。こうやって、今も海外の何処かで、若い誰かが自分の才能を信じてチャンスを掴んでいるのかーーと、しばし感動。なんだか、仕事で頑張るエネルギーをもらった気分だ。でも、残ったメンバーを見ると、何だか怪しそうだよなぁーー。だいじょうぶだろうか、大丈夫だよね。そんなこんなと思いを巡らしていると、黒人の二人組。悪そうだぁー。こういう金持ちのホテルには、それなりの人も滞在している。やおら、黒人系の中年おばはんに大勢でなにしているの、はぶりよさそうじゃんとか言っているみたい。おばはんは軽く流して、灰皿を渡し、煙草に火をつけてあげて、別の席にさらりと促す。うーん。年季入っていますね。結局、ニュートラルと思ったおばはんは、師匠格側の人間で、最後に中国系のプロモーターと師匠格がお金のやり取り(条件交渉)をする状況に突入したようだ。

<プランタンのたまごっちとラファイエットのキャビア&シャンパン・バー>

 休息十分で、そのままオペラ座裏のデパート街に。定点観測をしなくては。プランタンでは、ぶらぶらとおもちゃ売り場へ。たまごっち有る?と期待せずに聞くと、指であっち。半信半疑で見てみると、ありました、ありました。ショッキング・ピンクとオレンジのみだが、20個ぐらい。なんだ、ブームは去ったのか、売れ残っているじゃんと思って、となりのギャラリー・ラファイエットに行って見ると、有るとはいったものの中国製の偽物。パリでは、本物偽物の区別がまだつかないらしい。ところで、ラファイエットの2階の食品売り場はかなり遊べる。ちょっとしたキャビアを喰わせてくれるシャンパン・バーやらワインのショット.バーやら、冷たい物は充実している。

 3階のブランド物スーツコーナーでは、アジア系のおじさん2人組が買ったスーツの梱包を待っている。なかなか、来ないのか、待ちくたびれて、ややご機嫌斜め。どう見ても商売を邪魔しているチンピラにしか見えなくて、怖くて誰も店の中に入れない。おいおい、これじゃ香港映画の撮影だと、結構一人で受けまくる。


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