トップへ


こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
03年06月06日付
こちら情報局

六本木ヒルズ

 オープンから1ヶ月以上経過し、ようやく落ち着いてきた感のある六本木ヒルズ。筆者にとってはインスピレーションをかきたてられる空間。あちらこちらを徘徊し、日々、無駄遣い中だ。
 
 巨大都市空間ゆえ、迷う人が続出のようだが、それだけ遊び甲斐があるというもの。何度も通って覚えるのも、楽しみのひとつだ。
 
 個人的には、イタリアのベネツィアの、壁に囲まれた細い路地に居るような感覚があるのだが、知らない都市に来たのだし、大いに探検してほしい。
 
 この六本木ヒルズについては、メディア特有の取り上げ方があった。まずは、切り込み隊が「おお、こんなところにこんなものが」と持ち上げ、次に「大混雑の様子」を伝え、最後に「つまらない」と突き放す。
 
 こうした報道を真に受けてか、六本木ヒルズを「見物」に来た人の中にも、ああでもない、こうでもないと辛口批評を展開する姿もちらほら。「ブランドなんてどこでも買える」とか、「丸ビルしかり、どこも似たり寄ったりで代わり映えしない」などなど。
 
 でも、そうした彼ら彼女らの足元を見ると、しっかりブランド品の大きな紙袋があったりする・・・(笑い)。
 
 地方からの視察も絶好調で、あちらこちらの飲食店では、なぜおらが街にはこうしたチャレンジに向けたエネルギーがないのか、侃々諤々の議論が聞こえてくることもある。
 
 さて、そんな六本木ヒルズ。視点を変えると、新しい市場創造が行われているのではないだろうか。
 
 例えば、老舗傘メーカーが新規ブランドとして出店しているし、ブランド同士がコラボ店舗を出している。ここにしかない、商品を出していきましょうという積極戦略だ。ポイントは飽きられないようにどうするかである。
 
 都市として成功しているか否かの結論は、何年か待たねばならないが、少なくとも、文化創造の芽は出てきた。あとは顧客、観客の育て方次第だ。
 
 そこに関わった人々の小さな工夫、小さな努力に目を向けると、日本の活力の再生も見えてくる。