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こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
03年12月19日付
こちら情報局

フセイン元大統領拘束

 フセイン元大統領が拘束された。それも出身地すぐそばの民家の穴蔵から。パリッとした風貌ではなく、もうそれこそハリーポッターにでも出てきそうな出で立ちで。
 
 最近の報道は、生中継やネットによる、バーチャルゲーム感覚の臨場感が主流だったが、今回ばかりは十分な準備を1日かけて行い、映像を用意し、周囲をあっと言わせた。何しろ影武者が多くいた人物。実は別人だったとなると大変だ。血液検査をし、DNA鑑定をし、歯の治療跡なども調べたに違いない。
 
 これを見て、残党は奪還しにくるのか、あるいはそのままフェードアウトしていくのか。イラク国民は、彼の、民族としての闘争をどこまで支持するのか。
 
 バグダッドの広場に集まり歓喜に沸く群集は、子供を含めカメラ目線がちょっと白々しく見えたし、ピックアップトラックの荷台で騒ぐ様や、それを追いかけるカメラへの刹那刹那のポーズは、映画を見ているようでもあった。
 
 気になったのは、コメントの出し方。現地での記者会見は日本時間の21:15。イラクの15:15、米国では東部時間で朝の7:15にあたる。ブッシュ大統領はそれから5時間後、東部時間の正午、西部時間の9:00に会見を行っている。
 
 そのとき、日本は既に夜中の2:00である。我らが小泉首相は、せめてイラクでの記者会見直後、日本時間の22時頃にコメントを出せなかったのか。日曜の夜で、出すためのスタッフが居なかったのか。気になる。
 
 また、憲法の前文を読み上げて自衛隊派遣の意義を説いた小泉首相だが、フセイン元大統領拘束の情報が公表前に米国から提供されていたのか、説明はなかった。
 
 結局は、派兵しないと大人扱いされないと、気持ちを新たにしたのだろうか。
 
 なんだか背伸びをして、こっそりタバコを吸う中高生のようにも見え、本当の大人とはどういうものかを知るのはもっと先のようだ。健康を害さないように、吸い過ぎには注意したいし、最近は禁煙が主流になりつつある。