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こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
04年02月13日付
こちら情報局

『酵母菌三人衆』山形へ

 先週末、山形県白鷹町というところに出かけた。総務省が行う100の市町村をITで活性化させる「eまちづくり」プロジェクトでご一緒する2名の先生との旅だ。
 
 私達は、電子会議室の世話人(ファシリテーター)を仰せつかっており、100の自治体のプロジェクトに助言をしたり、ヒントを与えたり、デザインされたウェブや情報システムにコメントしたり。
 
 そのなかでも特に一家言持つ3人衆が山形県の山奥まで出かけた。
 
 山形新幹線で3時間の赤湯からさらに1時間。計4時間で現地に到着。
 
 今回は、発酵シンポジウムということで、シンポジウム前に酒造りに味噌造りを実体験し、私達3人衆が酵母菌となり町の皆さんとさらに発酵し活性化しようという試みだ。
 
 酒造りでは寒仕込みというのを体験したのだが、これがなかなかの重労働。昔ながらの手法にこだわるものだから、中腰で蒸した米を冷まし、これを二人がかりで担ぎ、さらに冷ました上で貯蔵タンクに入れ、櫂(かい)でかき回す。
 
 地酒が旨いのは、その地の食材と良くマッチするからであり、酵母菌の相性が良いからだそうで、ちょくちょく来るように諭された。
 
 味噌はというと、複数のものをブレンドさせた、オリジナルにこだわっている。味噌の活きた酵母菌は、大手の流通ではほとんど熱処理されてしまうらしい。数日置くと、パッケージが発酵熱により膨らむからだそうだが、身体に良いのは活きの良い菌なので、実は膨らんだ奴を購入するのが通だそうだ。
 
 山形県と秋田県は糠床の聖地で、ここだけは大手流通に支配されずに、各家庭の伝統の味が残っているらしいのだが、その後継者探しもだんだん難しくなっているようだ。
 
 そんな話を聞きながら、第二部では我々三人衆から地域活性化の知恵を出し、戸惑いつつも頷く聴衆に安堵する。
 
 テレビの旅番組を見るだけではわからない、その土地の息遣いを体感し、草の根のボランティアを暫く続ける勇気を頂いた。