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こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
04年09月24日付
こちら情報局

プロ野球スト問題

 70年間ストなど経験したことのない業界の騒動に国中が注目している。これほど目立つストは久しぶりなためか、妙な期待感、高揚感がある。
 
 強い者と弱い者、善玉と悪玉、明と暗。こうした対比は支持者を得やすく、メディアがメッセージを伝えやすい。
 
 スト問題。球団側、特にオーナーが悪者になり、新規参入者が正義の味方としてさっそうと参上という図式がそこにはある。覆面ヒーローが庶民のために立ち上がる。それをお代官様が許さない。
 
 球団側の考えは、「正義の味方が果たして本物か」「新興勢力に実績がない」「マゲに刀(定番のビジネス作法)ではないから、相手にしない」・・・。
 
 他方、参入を狙う側はどうか。新たに登場した楽天の三木谷社長。「報道2001」に臨んだ姿に、正直驚いた。
 
 驚いたのはそのさっぱり具合。昨年あたりから、三木谷社長はあごの下にヒゲをたくわえ、こってり感があった。
 
 そのヒゲをそり落とし、スーツにネクタイ。このネクタイがポイントだ。成功者が着こなす「良質のスーツをノーネクタイでイタリア風」ではない。典型的なエリートビジネスマン、経営者の姿に戻り、彼の功績を知らない人が見ても、安心感を誘う。
 
 では球団側がこのまま突っ走るか。まだまだ時代劇の中盤なので不確定要素は多い。
 
 一つ言えるのは、球団側の主張する「審査が必要」「時間が足りない」が唐突で一般には排他的と映ることだ。
 
 それと野球は攻守交替が基本なのだから、攻める側に回ることも可能だ。そのためには、1社限定で参入を認め、本気の奴だけ入札せよとなると面白い。
 
 選に漏れ、あっさり引き下がるところは宣伝目的。残念がる者がいれば、蔵のなかから偶然出てきたかのように、さらりともう一つの枠を示すのだ。「おぬしも悪よのう」と言われるくらいのシナリオを考えるべきだ。