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こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
05年01月28日付
こちら情報局

女子フィギュアスケート

  女子フィギュアが世界を狙えるまでに成長したその戦略にフォーカスした番組がいくつか出てきた。
 
  最初に見たのは、NHK「クローズアップ現代〜女子フィギュア大躍進の秘密」。
 
  世界を狙えるトップクラスの輩出を掲げ、12年かけて、一からシステムを作り変える。合宿での選抜に始まり、世界を狙える若手選手数名を集中的に育成し、国際試合に派遣して度胸をつけさせる。
 
  昨今、日本の競争優位を確保するため、様々な中長期ビジョンが打ち出されているが、「作文」が多い。少子高齢化によるマンパワー不足、ゆとり教育の弊害などが指摘されているが、まさにそうした環境変化や制約条件のなかで、どういうビジョンで、どういう戦略をもって目標を達成すべきかという視点が抜けている。そういう意味で、女子フィギュアのケースは、良い成功事例となる。
 
  選手が一歩一歩、成長するなか、それぞれの段階、年齢で必要とされる技術と、その獲得のための場の提供を図る。選択と集中による育成。協会による至れり尽くせりの仕組みなのだが、世界を狙うには、最後の最後で海外の著名コーチのアドバイスが不可欠となる。このとき、コーチが喜んで指導したいと考える、可能性を秘めた逸材でないと相手にしてもらえない。
 
  もう一つ、フジテレビの「舞姫たちの世界挑戦」が面白かった。出張のため翌日の朝が早かったにもかかわらず、日曜深夜の番組に見入ってしまった。
 
  TOKIOの国分太一さんによる密着取材を通して、三者三様に育つ女王ならびにその予備軍らを見ていると、画一的ではなく、それぞれの個性を伸ばしている様が参考になる。
 
  今、国や自治体、企業や組織、教育現場が悩んでいる、次の競争優位への戦略がここにはある。大事なのは、次世代の主役に選ばせる権利と、憧れのものへのステップ、プロセスをはっきりさせることだ。航海図なき迷走だけは避けたいし、根性論だけでは誰もついてこない。