トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年2月18日付
こちら情報局

観光資源

 実は先々週から海外に居る。予定では今頃ハワイを散策中である。

 「ほお、優雅に休暇ですか」「このご時世に随分と羽振りがいいですなぁ」というつぶやきが聞こえて来そうであるが違う(笑い)。  

 残念ながら、仕事で来ている。「ふーん、可哀想に」「リゾート地での仕事は酷だ」とホッとする皆さんの笑顔が頭に浮かぶ...。

 実はここ数年、日本経済の活性化のための方策に思いをめぐらせているのだが、日本にとっての最大の手つかずの財産は観光資源であるとの思いは強い。

 で、手始めに沖縄をたたき台に、日本にとっての効果的な観光事業戦略を練ることにした。

 が、話はそれほど単純ではない。

 一つは当事者が観光資源で十分に勝負できるとは思っていないことである。

 自分の生まれ育った場所の気候と風景、海や山が世界のリゾート地に引けを取らないと考えず、ビジョンだけ掲げている状況なのだ。

 その理由に県民に十分な経験がないことを挙げたい。海外リゾートに行くよりは、人工的な先端都市に憧れる。これはこれで無理もないことなのだが、観光客が求めているものとはズレがある。

 筆者の経験では、十数時間も飛行機で拘束され、数十万円もの大金をはたいて出かける海外著名リゾート地と国内のそれを比較すると、日本の方が上のことも多い。

 問題の根本は、観光資源には、ハードインフラのみならず、ソフトインフラも含まれることだ。サービス・マインドが必要不可欠だ。

 平日に久しぶりに横浜の中華街に行った時のこと。遅めの昼飯を求め古ぼけた小さな一軒に入ったら、後から小学校低学年の子供がランドセルを背負って入ってきた。彼は咄嗟に帽子を脱ぎ、ちょこっとおじぎをして2階に上がっていった。三代目としての教育は万全だ。