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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年5月19日付
こちら情報局

神の国

 森首相の「神の国」発言に野党が猛反発し、動向が注目されている。

 そもそも論で言えば、橋本政権や小渕政権において果敢にも首班指名に挑戦した若手にこそ暫定政権の担い手としての権利を与えるべきであり、そのチャレンジへの敬意と配慮にこそ自民党の次世代への活力創造と新生日本のメッセージが込められて良いはずだ。

 青木官房長官の「首相代理への要請があった」という発言自体も二転三転し、明確な指示があったのではないという訂正が時間を置いて、それこそ沈静化のタイミングを見極めつつ、そっと出されている。

 民主主義国家における政権誕生のプロセス自体が不透明極まりなく、「シンキロウでの密室合意」と言われても仕方がない状況にある。

 首相自身は「早稲田のラグビー部出身」という爽やか路線を目指しているようだが、実際のところ入部早々の退部で体育会系を連呼するのでは、四年間泥と汗と涙で必死に頑張り抜いた全国のラガーマンOB達は納得いかないのではないか。

 まさか森首相も連発する失言を「ノックオンだ、ラインアウトだ」で済まそうとしているのではなかろう。

 今の自民に公明を足した重量級フォワードならば、亡き監督小渕さんの弔い合戦で全国優勝も夢ではないという戦略なのだろうか。

 老婆心ながらに申し上げるならば、今年からラグビーの試合もスピード感を大事にし、無意味なノックオンを取らないようにルールが改正されることになった。

 「誤解」に対する状況説明ということだが、まさに発言を行った「場」が問題なのであり、「公人」としての「立場」と内外への不協和音の連鎖が問題なのである。