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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年6月2日付
こちら情報局

ドットコム

 ドットコム・ビジネス花盛りである。いまさら解説する必要もなかろうが、「渋谷系」と称される新興企業が新しいビジネスモデルを引っ提げて、次々と登場。

 彼らがホームページ・アドレスの最後に使用している「.com」をそのまま読んでドットコム。最近ではテレビCMで大橋巨泉さんが盛んに連呼し、耳なれた言葉として定着しつつある。

 さてこのドットコム。耳にする度に胃をキリキリさせたビジネスマンも少なくないだろう。

 中高年の多くがドットコムに対する劣等感にさいなまれ続けているのだが、今回ばかりは、過去にワープロやパソコンが導入された頃とは比べものにならないほどのプレッシャーが襲っているはずだ。

 この不況のまっただ中にあって、終身雇用が崩壊し、年俸制・裁量労働制が導入されるなか、家族のためにと必死に会社にしがみついて生きている毎日。

 ようやくどうにか借金をしつつ手にしたマンションは年収の数倍。つましく暮らしていこうと誓った矢先、億ションを購入する若者が続出というニュースを耳にする。

 どうやらドットコム系企業の社員が、店頭上場直後に売却した自社株で現金購入しているらしいというのがもっぱらの噂である。

 どこで間違ったのか、職歴と学歴にさしたる違いがないのに、雲泥の差...。

 これが最近の日本でのドットコムの現状なのだが、上場を果たした勝ち組も五月の連休明けから株価が下落しはじめ、そわそわ状態。リアルビジネスとバーチャルビジネスの狭間での動きが株式市場の不信感を誘っているようだ。

 出遅れ気味の大手企業は、今年の株主総会での突き上げを前に、業界のポジションを巡り水面下で熾烈な競争を繰り広げており、もう一波乱ありそうな雲行きだ。