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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年6月23日付
こちら情報局

ペナン島

 泣いても笑っても選挙まであと二日。各党候補は、最後の声をふりしぼり、支援をお願いしていることであろう。選挙直前ということもあり、中立的な立場に徹するため、個別具体的なことは何も言わないようにしている。

 しかし、それで先週も先々週も政治外交的なコメントをせずに、お茶を濁していたわけではない。

 実は、この時期を利用し、アジア諸国のIT(インフォメーション・テクノロジー)の最前線を調査し、日本ならびに日系企業の事業戦略の再構築に必要不可欠な「競争の源泉」を探っていたところだ。

 みやげ話は別の機会にするとして、選挙に結びつく話を少々。マレーシアのペナン島なる場所で面白いネタを仕入れた。

 ここは日本でもリゾート地として有名なところだが、米国のインテルやヒューレットパッカードなどの半導体関連の一大生産拠点であることはあまり知られていない。

 実は、三十年前には、ペナンは農業での自給自足以外に主たる産業が何もない状況だった。そのペナンが、ハードウェアの生産拠点として自らの地位を築けたのは、何を隠そう選挙により、新たな長官が誕生したからである。

 華僑系のこの長官が、米国の学者が書いた長期ビジョンのレポートに注目し、矢継ぎ早に改革を実行、規制緩和を大々的に推進した。

 今では、労働コストが上昇し、付加価値の低いモノについては、進出外資が中国沿岸部への移転を検討するまでになった。

 幸いペナンにはスルタン(州の統治者)なる絶対君主が存在せず、選挙により新たな指導者を迎え入れやすい下地が整っていた。

 日本国内では一貫して国民全体に配慮した景気浮揚が選挙の争点となっているが、規制緩和による構造改革の先進事例はアジアにも存在する。