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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年10月6日付
こちら情報局

電子政府

 IT革命花盛り。どこもかしこもIT関連の予算計上が流行しているが、議論のための問題提起を少々。

 電子政府では、わざわざ役所に出かけて資料請求する必要がないらしく、市民(国民)にとって大変便利な社会が到来するらしい。

 が、二つの疑問に突き当たる。

 一つは、公の場で、ネットを通して得た資料をそのまま使えるようになるかという問題だ。

 もちろんこれは、電子透かしなどの技術が発展途上にあり、資料の違法コピーや改ざん等の恐れがあるためすぐには無理とも推測できるが、役人側の習性からは、将来的にも今一つしっくり来ないのではないだろうか。

 というのも、最近役所に出向き、提出のために必要な自らの個人資料を請求したのだが、印鑑(三文判)を忘れるというミスを犯した。

 サインとか拇印でなんとか済ませもらえないかと懇願したが、「うちは役所なものですから」と優しくだが、なんだかとても使い慣れた様子の言葉で断られた。複雑な気持ちで渋々徒歩10分の駅前へと戻り、180円の三文判を購入するはめになった。

 それならいっそ、民業圧迫を別にすれば、役所内に三文判の自動販売機を設置してくれた方がまだましだと考えさせられてしまった。

 例えば、不動産の賃貸契約等の場合、契約先によっては三文判ではなく、印鑑証明と実印での対応が必要なところもある。認め印で結構となると捺印という慣習を踏襲しているだけの可能性もあり、IT革命の前に事務手続き簡素化への取り組みが望まれよう。

 もう一つは、コストの問題だ。今のままだと、一つの証明書の発行には安いもので150円、一般的に300円の手数料が請求される。電子政府で少なからずの税金が投入されるが、発行コストがゼロになるとは誰も言っていない。