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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年10月13日付
こちら情報局

オランダと自転車

 オランダの土産話を少々。オランダといえば木靴に水車、チューリップとその球根の売買(バブルの発生)などのイメージが浮かぶ。

 が、実際にオランダを体感し、最も印象的だったのは、自転車通勤・通学が発達していることだ。

 たぶん坂道がないことが影響しているのだろう。相当な数が行き来するが、無造作に道ばたに駐輪する輪害など見受けられず、自動車やバス、トラム(路面電車)などと平和共存していた。

 実は、アムステルダムでは、運河に沿って道が曲がりくねっている上に、EU統合による域内観光ブームを狙い、道路や歴史建造物の大改築が進められているため、運転も歩行もたやすくない。

 観光客などは、ただでさえ左側通行と右側通行など交通規則が異なるうえに、観光目的に上を見上げて徘徊するため、交通事故が後を絶たないと乗車したタクシーの運転手に諭されもした。

 さて、自転車に関するマナーを遵守するのはなぜか。個人的には自転車専用道路の設置に注目した。

 歩行者側に一番近いレーンをカラー塗装している場合が多く、公園等の散歩に適した場所にも専用道路が存在する。歩行者が間違って侵入しようものならば、一斉にベルを鳴らされる始末。

 一瞬、観光都市での冷酷な対応に観光客側としてはむっとするが、各自のリスクの及ぶ範囲内での権利主張であると考えると実は彼らの主張は理にかなう。むしろ自転車と歩行者の区分が明確な分、責任感が強く、公共マナーが良い。

 日本では、道路行政上の自転車は中途半端な位置づけにあり、歩道上の走行は違法だが、安全上やむなしとの認識が強い。

 歩道との区分けを明確にせずに、かけ声だけで自転車の駐輪・走行マナーの改善を図るのには無理があろう。