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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年12月15日付
こちら情報局

日本国初代大統領

 『西暦20××年、日本政府は経済改革の度重なる失政から、政治不信を払拭すべく、我が国初の首相公選制を実施。』

 現実の話ではない。漫画の世界でのことだ。休刊した月刊BART(集英社)で連載されていた。

 日本国初代大統領・桜木健一郎。43歳。日本国内のアメリカンスクールを卒業後に渡米。スタンフォード大学では経営戦略を専攻。卒業後ワシントンポストで経済記者として10年活動し、34歳で帰国。翌年政界入りを果たす。

 あくまで漫画の世界での話である。その編集ブレーンとして筆者も参画させて頂いていた。一ヶ月に一度、現役の国会議員、航空評論家、研究員、フリーのライター等が集まり、公選制で選ばれた首相のリーダーシップはどうあるべきか、戦略参謀の目から考え得るシナリオと選択可能な代替案を模索し、漫画の世界に反映させた。

 ところが、事実は小説より奇なり。近未来での可能性のある出来事を網羅したつもりでいたが、現実が漫画の世界を凌駕することがしばしば発生したこともあり、第一章が終了した時点で国際情勢が落ち着くまで待とうと相成った。

 現実の世界はどうか。加藤前幹事長による問題提起は不発に終わったものの、にわかに首相公選制の導入が議論の俎上に上がり始めている。ただし、前途多難。

 と思いきや、民主党代表の鳩山由紀夫氏は月刊選択の12月号において「首相公選」と「甘えぬ安保」に向けた「改憲」に言及した。

 プロとしては、「改憲」というのが筋だろうが、一般には難解である。微妙な問題を含むため、ライバルから攻撃されやすい。

 次期選挙では「首相公選」を前面に出したらどうか。自らの手で首相を選べるというのなら、無関心層は目を覚ます。プロセスを重視してこそ真の民主主義である。