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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年5月29日付
こちら情報局

 ビビビ

 今年の流行語大賞になるかどうかは別にして、出逢いの瞬間を表す擬態語として「ビビビ」が登場した。月曜日、いつものように、テレ朝のモーニング・ワイドを見ていたら、キャスターの伊藤聡子さんがスタジオに飛び込んできたファックスを読み出した。歌手の松田聖子さんが当日結婚するという。その日の午後、結婚式を終えた彼女がワイドショーのインタビューに応え、結婚の予感を語った言葉が冒頭の「ビビビ」である。

 似たような状況で、こんなのはどうだろう。相手の潜在能力を悟った時には「ムムム」。まんざらでもなければ「フフフ」。失敗したかなぁと思えば「ゲゲゲ」。プロポーズされて、駆け引きに勝ったと思えば「ククク」。

 人(恋人、友人)に限らず、動物(犬、猫)、モノ(時計、家具、車)など、これはという出逢いの時には「インスピレーション」が働くものだ。昔から、恋に落ちた瞬間は、「雷に撃たれたように電流が体中を走り、ショック状態になる」という。

 ところで、私の仕事を手伝っているアルバイトの大学生、Dさんは現在4年生。そろそろ採用に向けた最終面接というところだろうか。あちらこちらと面接を重ねるが、本人も本命にあるべき、ここぞという決定打「ビビビ」が無いと悩んでいる。

 しかし、冷静に考えてみると、入社したからと言って、必ずしもすぐに希望する部署に配属されるとは限らない。憧れの職種に就けたとしても、理想の上司が待ち受けているものでもない。

 先輩達は、流行の転職を繰り返し、がんばって青い鳥を探したり、妥協して身近な上司を「鳥」と見立てたりしている。

 思うに、大切なのは、成長した将来の自分が「ビビビ」であるよう努力を惜しまないことだ。