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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年6月26日付
こちら情報局

出かける時は...

 マーケティング戦略の新しいセオリーとして「ワン・トゥ・ワン」がもてはやされている。顧客との関係を緊密に、それこそ「ゆりかごから墓場まで」消費者が必要とする商品・サービスを提供しようという考え方である。その前提条件は、「優良顧客の囲い込み」にある。一対一でサービスを展開するため、客単価は高い方が良く、理想的な優良顧客は富裕層となる。

 ところが、富裕層はサポートに対するフィーを支払う替わりに「質の高いサービス」を要求する。それこそ、痒い所に手が届くサービスをである。

 このように書くと、24時間体制で「もみ手」状況を作れば良いかというとそうでもない。つかず離れず、必要な時に必要なサービスが基本中の基本となろう。

 ところで、富裕層をターゲットにした商品として一般的に知られるものに「ゴールド・カード」なるものが存在する。近頃は、このままでは「メガ競争時代」に勝てないと判断したのか、敷居の高い老舗の米国系カードも日本の流通系カードと提携し、お手軽な年会費を提示。新たな富裕層予備群として都会派ビジネス・ウーマンをターゲットにし始めた節がある。

 さて、経営上の「潜在リスク」として指摘したいのが、以前から取引のあるカード保有者の処遇である。バブルの頃に散々若者を囲いこみ、会員名簿だけが膨らんだせいか、顧客の顔が見えづらくなっているようだ。翌月の引き落としに十分な金額を口座に入れても、運悪く公共料金等の支払いが重なった場合、未入金と称する激しい取り立てに遭遇する例も散見される。

 最近では、テレマーケティングと称し、自宅や勤務先などに電話料金割引サービスの売り込みを図ろうとする。米国流経営を標榜するだけだと『出かける時に忘れるぞ』とつぶやくこの頃である。