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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年8月7日付
こちら情報局

夏休みの宿題

 小渕政権が誕生して早1週間、相変わらず外野からの叱咤激励は激しい。今度の内閣は『経済再生』を旗印に、派閥均衡、民間登用、経済優先を目指しているようだ。内閣誕生にあたり、事前に予想される閣僚への根回しが済んでいるのはけしからんという議論があるものの、首相としての信任を得る上では、早め早めに経済ブレインを登場させ、トータル・パフォーマンスの向上を目指すのは至極当然の戦略であるとも言える。

 さて、組閣までの行動はギリギリ・セーフと甘口の採点をしたいところだが、では次の焦点は何かと言われれば、経済再生ビジョンを1ヶ月内におぼろげながらも描き出すことなのだと指摘させて頂きたい。

 昨年を思い浮かべるに、国際的な投機筋は幾つかのイベントにタイミングを合わせるかのように、ファンダメンタルズの健全性を確認すべく活発な動きを見せた。その代表的なケースとして、例えば中国の江沢民国家主席の訪米時に、香港ならびにニューヨークの金融マーケットに浴びせ売りを仕掛けたことであろう。

 気になるのは、同じような構造が、九月には日本において出現することである。江主席が日本を訪問することになっている。専門家の間でも、有事対応を巡る解釈で幾つかの注文がつくということに目が奪われがちであるが、低迷するアジア経済での中国の我慢の限界から人民元切り下げをちらつかせ、日本のいっそうの自助努力を要請する可能性を否定できない。

 さて、その時に国際社会は日本からのメッセージに注目するのだが、出し方如何では失望売りが相次ぐことになる。日本の首相としては、夏休み明けまでという期限内に、内外の英知を集め、実現可能なプログラムを立ち上げ、わかり易く説明することが大事である。