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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年11月6日付
こちら情報局

高齢化社会

 出張中のオフを利用し、遠出した。ニューヨーク市の隣州など近郊のコミュニティの創造と運営状況を個人的に視察してみた。

 ニュージャージー州は、ニューヨークの隣に位置していることもあり、ベッドタウンとしての色彩が強い。しかし、近年、税制優遇を前面に出したことから、大手企業がこぞって脱出。ニューヨークの一員となっている。

 これに対して、さすがの国際都市ニューヨークも、やっとのことで重い腰を上げ、各種改革に乗り出したところだ。但し、まだまだ先行き不透明であり、ライバルは善戦中。と言うのも、ニュージャージーには高級住宅が建ち並び、その上、郊外型高級マンションを多く建築している最中なのだ。

 これに注目したのが、退職した企業経営者やオーナー社長。老後のことを考え、送迎バス付きで飲食が可能な公営レストランを運営するこれら公団高給マンションを買い占めているらしい。自動車社会で孤立することが最大の悩みだった彼らは「安全性」と「利便性」を高く評価しているのだ。

 この話、優遇税制を実現し、企業誘致を図る一方、企業からの税収をコミュニティの創造に回し、移住者の利便性を考えることで拡大生産を図る。まさに我が国がかつて得意としていた長期的経営と互助精神を視野に入れている。

 高齢者が増えるのであれば、専用のインフラ整備を心がけるその姿勢を高く評価したい。日本では、どうも不景気の影響もあってか、高齢化社会の到来とは高齢者を排除する様々なハードルを設け、効率良い社会を作り上げることだと勘違いしているようだ。

 紅葉が始まったばかりの彼の地には、アウトレット・モールもあり、街づくりのヒントなるものには事欠かない。地方自治の担当者も参考にしてはいかがだろう。