トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年2月5日付
こちら情報局

東急日本橋店

 東急日本橋店が336年の歴史に幕を下ろし、先週末で閉店した。閉店セールスが何やら騒々しく、近郊に限らず地方からも買い物客が押し寄せているということで、マーケティングのための情報収集も兼ね、閉店4日前の木曜日に出かけてみた。

 事前のマスコミの報道から、だいぶ混雑がひどいということは予想していたが、それにしても凄かった。1階の正面玄関入った所が婦人もの売場だったせいか、獲物を狙うハンターのようなお客様の目線が、それぞれの縄張りを主張しているように感じられ、たじろぐ筆者は直ぐ2階に避難。途中のエスカレータから見た1階の臨時支払いコーナーは、正月の明治神宮の参拝客さながらの状況だ。

 それではと4階の紳士服売場に足を向けると、ここでは支払いが1時間待ちの状況である。なにやらディズニーランドの人気アトラクションを彷彿させる。

 さて、買い物客が辛抱強く並ぶレジの横をくぐり抜け、何を購入しているかと覗いてみれば、紳士物ワイシャツを2枚とか、冬物マフラーとか実につつましい。

 すっかり疲れて、日本橋界隈の老舗和菓子屋さんとかを覗いてみると、戦利品を得たご婦人方が、甘味処でまたもや列を成していた。

 消費者心理とはおかしなもので、閉店セールだと言われれば、閉店を惜しみながら、ここぞとばかりに財布を緩めがちである。

 東急日本橋店の目と鼻の先の三越日本橋店はどうかというと、やはりセールを実施していたが、こちらはゆったり優雅に買い物を堪能できる状況にあり、1時間や2時間悪戦苦闘するならば、こちらの方がいいやと思ってしまった。

 この手の話、生活感がなさ過ぎるとお叱りの言葉を頂戴しそうだが、日本の将来を考える上でのイソップ物語でもある。