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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年2月12日付
こちら情報局

都知事選

 青島知事の不出馬表明から一転、各党公認候補を巡る水面下の動きが慌ただしくなってきた。

 不出馬表明の当日であっただろうか、久しぶりに民放のニュースを見ていたら、青島氏が生番組に出演し、散々に貶されていた。途中降板はずるい、ちゃぶ台をひっくり返して敵前逃亡と容赦ない。

 しかし、考えるに、本人が立候補し、無党派層の多くが面白がって投票した結果の知事だったとしても、では当選の暁にどれくらいの都民が彼を応援し、「青島頑張れ」との声援を送っていたのだろうか。全員で梯子を外したのなら、新たなイジメではないか。

 都市博のような分かり易い象徴的なものの中止は是としつつ、その後の孤軍奮闘には手を貸さない。 議会政治なのだから、声無き声の都民の応援が無い限り、議会運営はままならず、妥協に妥協を重ねた青息吐息の青島氏の改革には自ずと限界があるのは明白である。

 そんな彼の功績をもう少し私達は高く評価する必要があるのではないだろうか。ひっくり返すだけひっくり返してもらえれば、私達は良かったなどと、有識者のさもありなんな論評を聞いても、では彼は無党派層から差し出された生け贄なのかと考え込んでしまう。

 四年が経ち、今回の不出馬表明により、もう一度振り出しに戻ったという感がある。今度のトレンドはというと、健全な議会政治を目指し、党の公認が不可欠だという。各党はというと、反則スレスレの「挑発工作」が功を奏し、相手も相乗りを断念するなど、立候補を巡る動きは従来と変わらない。

 各党が独自色を出しつつ、協力態勢にある他党の意向を酌み、なおかつ無党派層を意識するなどと欲張らないことを願う。赤字都政の試練は当分続くものであり、リーダーもサポーターもぶれない候補に将来を託すのが自然体である。