トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年3月26日付
こちら情報局

海上警備行動

 二艘の不審船への追跡打ち切りの第一報をニュース速報で聞いたその瞬間、「え、逃がしちゃったのか」との思いが頭を過ぎった。が、拿捕していたら関係国との折衝など難しい解釈も必要になるから、結果オーライだったのかと考えを改めた。

 関係者は、現実的には法律上の解釈に従いギリギリの対応をしたのだろうが、素人の判断では空から網を投げつけ、スクリューに絡ませるとか、水と混ざると巨大化する発砲スチロールのような壁を不審船の逃走する前方に出現させるなどの科学的な手法を検討できないのかと思ってしまう。当然、網や壁は数日間で水に溶け、環境に優しいものを使用するのである。

 今回の行動、一部識者からはスピード違反(逃走不審船)に武装ヘリ(護衛鑑の警告射撃)は大げさだとの見方が出ている。

 が、スピード違反車が改造ターボ車で、ミニパトカーが高速入口まで追いかけて行ったのだから、その後はウルトラ警備隊(護衛艦)の出動であっても良いだろう。ところが、ウルトラ警備隊は、目に見えない「怪獣」を想定しており、「必要な行動」を具体的にとる仕組みが乏しい。これでは追いつめても逃げられるはずだ。

 更に、何も抵抗していないのに威嚇射撃をするのは人道上云々なる声も聞こえてくるが、不審者が家族の部屋から出てくる所に出くわし、静かに逃げたから許してやろうと考える人はいまい。

 誤解してもらっては困るが、一連の対応が生温く、もっとドンパチ打ち込んで、捕獲せよと主張しているのではない。行使するかは別にして選択肢を保有することが自己責任と安全を確保する基本となる。海上保安庁の巡視艇のパワーアップを図り、威嚇射撃の次の行動が取れるような枠組みを急げば、拡大解釈も自ずと遠のく。