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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年5月21日付
こちら情報局

ペット犬

 予てから注目していた家庭用ペットロボットがソニーから発売される。未来志向のデザインにホッとするとともに、本体価格25万円、別売りキットを含めると30万円もするという予算に諦めの心境であることも事実である。

 それでも「研究用だ」「未来社会でのロボットのあり方を模索する」などと自らを説得し、六月一日朝九時からのインターネットでの受付をどうしようかと思案を巡らせている。一方で、提供された資料映像を見る限り、子犬のような可愛らしい仕草は大人気間違いなしであり、日米限定五千台では筆者の手元には届かないだろうなと考えている。

 さて、筆者とペットとの関係であるが、実はここ数年、深夜残業早朝出勤に供え、都心でのマンション生活を余儀なくされるため、犬を飼えない状況が続いている。

 が、心配することはない。駅までの十数分、近所で飼われる犬の一匹、一匹に声をかけ、挨拶をすることでペットを持てない欲求不満の大部分を解消している。

 毎日観察しているとおかしなモノで、普段は仲良しのはずの犬が、飼い主の前ではこれでもかと吠えまくり、自らの役割を演じようとしている。吠えながらもチラリとこちらを見つつ、「悪いなぁ、こちとら仕事中で」と言っているようで滑稽でもある。

 最近越してきた熊のような顔をした犬は、前の家の方が快適だったのか、あまり元気がない。都心の環境にまだ慣れないせいでもあり、コンクリートの駐車場の片隅に置かれたネグラは芝生のような快適性を得られないからだ。

 さて、最大の快感は、こちらで勝手に名付けた名前に当の犬が反応することである。深夜に広い庭を喜んで走ってくる様は、面目躍如と言ったところか。勝手に餌をやることだけは自重している。