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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年9月3日付
こちら情報局

噂メール

 昔から、「人の噂も七十五日」などと言われ、一時の騒ぎはそのうち廃れていくところに、噂は噂でしかないことへの諌めがあったのではなかろうか。

 ところがここ数年、というより去年あたりからか、急速に便利でやっかいなものが登場してきた。 電子メールなるものの存在である。

 電子メールはコンピュータ・ネットワークを介して、メッセージやデータを送信し、相手の都合に併せてその内容を確認してもらえる道具である。善意に解釈すれば、個人の立場(時間的余裕、見るか見ないかの判断等)を尊重し、マイペースで良心的なコミュニケーションを確立することが可能なツールが登場したと言える。

 日常業務での意見交換や打ち合わせ、日程調整などに電子メールを最大限活用させて頂いているが、中には「気晴らしにお送りしましたよ」というようなたわいもない内容も多い。それこそ探偵小説のような「旦那、鮮度の良い情報があるんですが...」的なものもあり、「本当かいな」と疑ってみたりもする。

 あくまで噂は噂なのだが、複数のルートから、ほぼ同時に届いたものについては、やや注意深くその後の展開を観測させて頂いている。実は、ここ数週間、噂を後追いし、事実確認をするような週刊誌ネタが数多く現れた。

 大げさに言えば、それこそ、第四・第五のメディアとしての「個人から個人」への情報の伝播(カスタマー・トゥ・カスタマー)が真実味を帯びる瞬間を体現しているのではなかろうか。

 なにやら抽象的な表現で恐縮であるが、東芝をめぐる個人ホームページの話も、最近の芸能界のゴシップ記事も、噂に真実味を与える画像情報や音声が「添付」され送られてきた。真偽のほどはともかく、インパクトは強烈だ。