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こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
04年02月27日付
こちら情報局

オウム裁判

 22日に放送されたNHKスペシャル。獄中のオウム幹部との40通の手紙のやり取りをきっかけに、その真相に迫ろうとするもの。
 
 元信者らへのインタビューにより構成されていた。
 
 ナレーターの独特の低い声で、淡々と取材結果が語られているのが印象的だった。
 
 冒頭、今もサリンの後遺症に苦しむ被害者と支える家族の映像から入った。加害者側からの描写でややもすると、見失ってしまいがちな、本来あるべきメッセージを再確認する位置づけであろう。
 
 オウム関連事件の実行犯たち。最後まで躊躇しつつも加わった者。まったく疑いもせずに、最後まで暴走した者・・・。
 
 オウム的な病理は少なからず私たちの底辺に横たわる。疲労困憊の現代社会をどう生き抜くべきか。あるいは自然に身を任せ、どう存在し続けるべきか。そう簡単に答えを見出せるものではない。
 
 結局、オウム事件とは何だったのか?
 
 先進国の抱える病理としての集団だったのか、日本固有の問題なのか。
 
 番組を見ているうちに、どこで彼らと私たちを線引きできるのか、どこから彼らが暴走していったのか、一歩間違えれば、ひょんなことをきっかけに、私たち本人や家族・恋人・関係者が同じ運命を辿っていったのではと考えさせられた。
 
 番組を構成するきっかけとなった「40通の手紙」は何を語ろうとしているのだろうか。何を語ったのだろうか。
 
 誰の心にも芽生える現代社会への不安。
 
 そんなことを考えていたら、最後の最後、エンディング直前に、再度登場したサリンの後遺症で寝たきりの被害者と支える家族。奪われた日常のさりげない幸せ。それを語る家族の姿が痛々しかった。
 
 あってはならない事件であることだけは再度確認しておかなければならない。
 
 崩壊したコミュニティの再生に、私たちはもっと世代を超えて協力しあい、声を掛け合うことが重要である。
 
 今日、松本(麻原)被告に判決が下される。