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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年1月14日付
こちら情報局

震災から5年

 祝日法の改正に伴い、成人の日が今後流動的になるため、阪神淡路大震災の教訓が今年を契機に薄れるのではと憂慮している。

 多くの若者が、地元で成人式を送るために帰郷し、あの震災で命を落とし、或いは直接的間接的に何らかの後遺症に悩む姿を思うと、あれから5年を経た今でも胸が痛む。

 あの震災を機に個人の人生観を見つめ直し、隣人との係わり方、日本を含むグローバルなサポート体制への理解を深めた人も少なくないだろう。

 事実、トルコで発生した地震や筆者の母国である台湾での救援活動ではメディアで報じる以上に、独自のネットワークで、やれる範囲から行動を開始したといった草の根レベルでの個人活動を耳にする。

 そういう筆者も、スタッフの両親が神戸に在住していたこと、都会での大規模地震ではその後遺症(心理的インパクト)が大きいことなどを鑑み、幾つかのボランティア活動に尽力した。

 大手企業の総務部、広報部の部課長さんに頼み込み、受験生用に社員寮を開放して頂き、備蓄していた缶飲料水を大量に分けて頂いた。当然、ピラミッド社会で業界横並びの意識というものが存在するため、一抹の不安が過ぎったが、企業担当者が自らの裁量の範囲内で多くの協力を惜しまなかったことなど、その後の筆者と社会の係わり方を決定づけ、希望を新たにさせてくれた出来事でもある。

 その当時と比べると、日本にもネット社会が到来し、携帯電話が飛躍的に普及した。

 ネットビジネスでの起業といった儲け話も宜しいが、緊急時の公共システムのあり方を「ポストY2K」のテーマとして検証する役割を政府、関係省庁、上場会社でもっと担って欲しい。