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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年2月11日付
こちら情報局

ボトムアップ

 この言葉、従来永田町の政治力学で重視されていたトップダウン型とはひと味もふた味も違うということで小渕首相が使っている。

 政府に期待せずに国民一人一人が上昇志向をもって欲しいとのニュアンスを含むそうだ。

 この話、一見合理的だが、ちょっと待ったといいたい。「下から盛り上げる社会作りを目指せ」ということのようだが、少し視点がずれている。

 一つは、誰が舵取りをするのかという問題だ。よく言われることだが、日本の指導者が小粒になってきた。戦後民主主義教育の弊害とでもいうのだろうか、みんなで議論し、全員にとっての幸せを目指す過程で、全体を引っ張り大局的見地から長期的な戦略を構築可能な指導者に恵まれていない。

 それどころか、現在のポジションの維持に一喜一憂し、後輩に道を譲ろうとしない風潮が蔓延っている。

 結果、ありとあらゆる考え方を吸収し、これらを可もなく不可もない状態で達成する、「お茶濁し」「先送り」的な措置が多い。

 もう一つは、21世紀の社会構造に対する認識のズレである。ボトムアップという言葉の中には、上下関係が存在する。「私使う人、あなた使われる人」という暗黙の認識があるのではと考えた。

 が、現実の社会では、フラットな横の連携が進んでおり、効率的なコミュニティの構築に余念がない。

 やや抽象的な議論に終始したが、ネットビジネスで起業を目指した若手経営者が、昨年あたりからビジネスマインドを同じくするもの同士でオフィスを構え、事業拡大に成功している。

 個々がイニシアチブを握り、個々の資源を出し合い、大きなプロジェクトを遂行する「ネットワーク型社会」ではアップもダウンもない。