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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年3月10日付
こちら情報局

デビットカード

 今週月曜日の三月六日から電子マネーカード「デビットカード」が本格運用され、手持ちの郵便貯金や銀行のキャッシュカードを使って加盟店で支払い決済を行うことが出来るようになった。

 自分の口座に預金が残っていれば、加盟店に設置してある端末にカードを通し、ATMと同じ暗証番号と支払い金額を打ち込むことで決済が完了する。

 この話、一見良さそうだし、何も最初からケチはつけたくないのだが、サービスを受けたくない人にも一律にサービスを受けさせることに対して文句を言いたい。

 実はバブルの頃から「絶対にお得」「損はさせない」という類の話には警戒するようにしている。

 確かに、加盟店規模は百六十社、年内には十万店規模になる。金融機関も九百三十二機関が正会員加盟した(昨年十一月末現在)。

 小銭を持たなくて良いことや、高齢者などクレジットカードを取得できない利用者には便利だが、メインバンクとして利用している口座では、暗証番号管理を含め利用者への注意喚起が少ないようだ。

 安全性を理由に東京三菱銀行は加盟せず、富士銀行は盗難保険を設け、最大で三百万円までの補償を行うことを知る人は少ないのではないか。最近はクレジットカードでも盗難や不正利用などで自己管理の甘さが問われ、補償されない場合もあるのに、暗証番号だけで果たして大丈夫なのだろうか。

 ICカードの普及と指紋承認システムなど新たな技術の成熟を待つ慎重さが求められるのではないか。

 ということで、サービス開始の初日、筆者はさっそくメインバンクのカードのデビッド機能を停止した。これとて協会の統一が取れておらず、手続きに結構時間を割いてしまったのだが、自己責任の名のもとでの一方的なサービスの強要は即刻辞めるべきだ。