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先週土曜日、台湾総統選挙が実施され、即日開票の結果、野党民進党の候補である陳水扁氏が次期総統に当選した。
若干四十九歳の彼が二十一世紀の台湾の舵取りを任され、中台両岸関係の改善に向け、全力を尽くすことになる。 今回の選挙での国民党の敗因は、連戦候補で一本化できず、元台湾省長の宋楚瑜氏が無所属で立候補したことによるところが大きい。 実は宋氏が国民党に反旗を翻したのは民主化進展で台湾省長というポストを廃止したことに始まっており、いわば必然的な結果であったのかもしれない。 そういう陳氏にしても前回の台北市長で予想外の敗北を期し、組織を立て直しての総統選であった。 二位の宋氏が意外に善戦し、接戦だったことで、新たな保守新党の誕生は時間の問題となろう。 さて、今回の選挙の特徴としては以下のことが印象的だ。 昨年12月にたまたま台湾で手にした月刊誌「天下」に、最後の三日間で野党支持に回ったあの李遠哲中央研究院院長が登場していたことだ。 地震の破壊力を目の当たりにし、「中央集権」「金権政治」の無力さと次世代は「地方活性化」の時代だと諭し、辛口批判を展開した。 李院長は台湾で唯一ノーベル賞(化学賞)を受賞した学者で、いわば李登輝総統に請われ、米国から帰国し、台湾の近年のハイテクの基礎を作った人間である。 要職に居た彼の過激な発言が気になり、やや奇異に写っていたのだが、複数の財界人とともに陳水扁候補を擁立すると聞き、その真意がここにあったのかと納得した。 次期内閣の鍵を握ると言われる彼は、投票結果を知ると、当日夜半には予定していた米国学会に向かうため機上の人となった。人心を捉えたのは「無欲」と実感した。
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