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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年6月16日付
こちら情報局

キックボード

 前職の証券系経済研究所に入社した若かりし頃、大学院からの中途入社の走りで、社内的にはだいぶ注目された。筆者としては、遅めの社会人デビューを前に、しばらく遊べなくなることへの不安が頭を過ぎり、人事に言われていた2月入社を勝手に1ヶ月ずらし、冬山にこもりスキー三昧。

 下山し、3月に人事部に出向いた時は、季節はずれの真っ黒な顔に、凍傷であちらこちら痛々しく傷が残り、人事部長が心配して何かあったのかと尋ねてきた(笑い)。

 そんな筆者も今勤務しているシンクタンクが数年前に裁量労働制を導入したため、夢追い人もままならぬ状況に陥っている。足元の生産性向上に勤しむべしと自らに言い聞かせ、ここ2年ほど冬のスキーには行っていない...。

 板の感触も忘れかけていたある日、スキーブランドで知られるK2が3輪スタイルのボードを発売と聞きつけ、入手した。

 この商品、夏にもスノーボード感覚で遊べるようにと開発されている。最初はまったく見向きもされなかったが、若者の間で大流行。日本発のヒット商品として、米国や台湾、香港などに普及している。

 さて、こうした高付加価値商品を誰がデザインし、どこで製造し、どれだけの利益を弾き出せるかに興味が湧く。思い立ったら早いもので、台湾の高雄の加工貿易区まで出かけ、キックボードの加工最前線を調査した。

 どうせなら、最終消費者に近く輸送コストを抑えられることも含め、沖縄や北海道で取り組めればと考えたが、加工技術もさることながら、労働コストが勝負の分かれ目と言われ、渋々退散した。

 少子化は慢性的な人不足を誘発し、コスト高に結びつく。3Kと言わず、外国人労働者への職場開放を進めないと、更なる空洞化が日本を待ち受けている。