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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年7月14日付
こちら情報局

寝てない

 突然降って湧いた不祥事への対応に追われた雪印の社長、思わず表題の言葉を口走ったのだろうが、事態はさらに悪化している。

 選挙前の寝ていてほしい発言に、寝ちゃダメと反発し、今度は寝てない発言が飛び出すとなると、一億総不眠症なのかと錯覚する。

 不謹慎ながらに、今年の流行語大賞はこれで決まりだ。受賞者が出てくるとは思えないが、早くも年末に心が動く。

 さて、本題に入ろう。ここのところ、筆者の本業であるリスクマネジメントが注目を集めている。

 何度となく繰り返しているのだが、いつものことながら、喉元過ぎればなんとやらの感がある。

 80年代後半の三井物産の若王子支店長誘拐事件に始まり、湾岸戦争での国外退避、阪神淡路大震災と続き、その後もペルー大使館人質事件、インドネシア騒乱などが記憶に残る。企業で言えば、東海村臨海事故、東芝に対する個人の苦情ネット公開など。まだまだあるがここでは割愛する。

 今回の雪印の問題は二つ。なんとかなるだろうとやり過ごし、内部規律がゆるむ。もう一つは、リストラの結果、絶対的なマンパワーが足りないことだ。

 記者会見上、社長は聞いてないよとびっくりし、工場長お前のせいだという風にそちら側に顔を向けたが、財務的にギリギリの状況まで追いつめられたら、モラルが低下することも念頭に置くべきだ。

 景気回復まであともう少しと言いつつ、カネ・カネ・カネで動くような尺度が採用され、自己責任の名のもとに終身雇用が年俸制にすり変わる。これまで日本には愛すべき企業システムがあり、曖昧な全体主義が「技」でもあったのだが、グローバルスタンダードと引き替えに、企業を愛せない社員を大量コピーしている。各社トップは、自社の総点検が必要だ。