トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年8月18日付
こちら情報局

千葉すずと水連

21世紀に向けたオリンピックを目前に、あの対応がそのまま国民の合意として了解されることに、2週間たった今も釈然としないものを感じる。言うまでもなく、日本水連と千葉選手の争いだ。

 新聞報道では詳細が伝えられていないが、個人が組織に挑戦したその代償は、弁護士費用だけでも一千万円を越えるという。

 新聞社系CATVのニュース解説番組では、今後千葉選手がマスコミに転向するべきではないと評論し、そのカリスマ性に注目するメディアの動きを早くも牽制。

 実はそんなことよりも、年齢とともに衰える体力を技術力でカバーし、スポーツを愛する全ての人達に自らの努力を見せ、生きる希望を与えようとした千葉選手のスポーツ哲学をどう考えているかという視点の欠落が大きいように思う。

 スポーツへの支援の大義名分は青少年の健全な育成であり、スポーツを通したフェアな闘いというのであれば、今回の裁定結果に対し、杓子定規に「残念だが、良い方向に向かうきっかけになった」というのではなく、具体的な支援をする組織団体があってもいい。

 健全な二大保守を目指す政党の皆さんも、こうした青少年を支援せずに、誰を見守り、誰を目標に生きろと子供達に言おうとしているのか。

 何か釈然としない対応に笑顔で応えた千葉すず選手の心の涙を見逃さず、チャレンジへの救済の方法を見つけることが望まれる。

 それにしても日本水連会長の会見での一言はひどすぎた。組織に刃向かうなと言いたいのだろうか。そういえばオリンピックに投入される税金を支払う私達の考えはどの程度反映されているのだろう。

 国益が私物化され、日本の未来を担う子供達の夢が摘まれていないか。過去の成功体験に引きずられるのは、まっぴらごめんだ。