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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年10月20日付
こちら情報局

PG日記

 先の知事選で作家・評論活動を続ける田中康夫氏が現職の副知事を大差で破り、保守王国長野の知事に当選した。

 田中氏が連載するPG日記。PGはペログリと読み、作品の中では女性を口説く行為を表す隠語として使われているが、選挙戦では知事としての品格を判断する材料の一つとして取り上げられた。

 おかしなもので、劣性と映る候補者は何をやっても裏目に出る。異色の対抗馬を攻撃すればするほど、何も変えられなかった自らの政治姿勢を浮き彫りにしてしまう。

 結局、有権者側は、「空気を変えたい」「現職の追認政策では21世紀も変わらない」と焦り、田中氏当選への原動力となった。

 当選後のメディアの反応は、新知事への期待半分、青島前東京都知事や横山ノック前大阪府知事の様に、中途半端にならなければ良いがという意見が半分である。

 全国紙のコラムが時流にうまく乗れた男として田中氏を酷評し、阪神大震災での同氏の活躍をパフォーマンスと評する向きもあるが、一時の勢いで何年も草の根の支援を続けられるものではない。

 一貫したボランティア活動では、人々に感動と勇気を与えたことは確かだ。ブレのない奉仕活動が、知事としての資質を十分に証明していたとも言える。選挙期間中、多方面から応援が駆けつけた。

 さて、長野県民であるが、田中知事にこれまで通りの「現場主義」「実践主義」を期待するなどというありきたりのエールを送ることは避けよう。県民で育て、見守るしかない。議会運営などで梯子をはずされそうになったら、県民が助け舟を出すのが最善だ。

 地道な選挙活動で少し痩せ、ナイスガイへと変身した田中氏だが、せっかくの機会だからどこかの首相のような「料亭政治」でのリバウンドだけは避けてほしい。