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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年11月3日付
こちら情報局

文化の日

 十一月三日は文化の日。芸術の秋、読書の秋である。実は、先週末から今週初めにかけ、長野県松本市で開催されていた日台の学者・文化人を中心とした交流「アジアオープンフォーラム」に参加した際に色々面白い話を仕込んできたので文化にちなんで披露したい。

 まずは某評論家から聞いた話。搭乗した飛行機が富士山の上空に差し掛かった時、突然機内アナウンスで「富士山が丸見えです」という案内があったそうだ。

 機内は爆笑の渦なのだが、フライトアテンダント(いわゆるスチュワーデス)はきょとんとしていて、何がおかしいのか解らないという表情をしていた。

 それまで完璧な発音で日本語をあやつっていたのだが、ああ外国人スチュワーデスさんなのかと気がついたそうだ。

 別にそれはそれで、彼女らのサービスに何か問題があったわけではなく、機内は和気あいあいとしていたことを付け加えていたが、それにしても日本語は難しいと思ったそうだ。

 もう一つ。元外交官との昼食時の会話。外交上のジョークとしては古典的なものらしいが、中国人と日本人を比喩した内容だ。

 華僑は商売上手だといわれるが、そんなことはない。日本人の方が商売は上手だというのである。

 何を言い出すのかと続きを聞くと、中国語では売買のことを「買売」と書き、先に買ってから売ることが「あきんど」なので、その分先に売ってから買う日本人には絶対に負けるというもの。

 こちらも言葉の妙、順序が逆だと大変なことになる。

 文化は個人の積み重ねとは大宅映子さんのコメント。日下公人先生は感性の満足であり、理屈ではなく深く静かに浸透するパワーと定義した。独自文化の押しつけをせず、平和に暮らしていきたい。