トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年12月1日付
こちら情報局

小さな留学生

 フジテレビで大反響だった「小さな留学生」と同シリーズの「若者たち」が先週末に放送された。

 「小さな留学生」は、中国から日本の小学校に転校した努力家の主人公が、周囲にも支えられ溶け込んでいくドキュメンタリー。やがて父親の仕事が破綻し、再び中国へと戻る...。

 「若者たち」は、日本の大学に入ろうともがく中国からの二人の留学生をレンズに収めている。

 一人は女子学生。成田空港に着くなり荷物が見つからずに泣きべそをかき、やっと見つけたアルバイトで自活し、心身ともに追い詰められながらも千葉大学に合格。その後も懸命に学び、来年卒業予定。日本企業の内定を得ている。

 もう一人は、一人っ子政策で大事に育てられた良家のぼっちゃん。26才で妻子を置いて来日。電車が途切れなく通るガード下の下宿に絶句する。底をつく貯金と格闘しつつ、バイトと語学学校に明け暮れ、どうにか明治大学に合格、在学中。来日当時の自分が恥ずかしいとこちらも確実に成長した。

 番組を見て感動したのなら、是非現実に目を向けて欲しい。

 留学生達の、ほんの一部が成功し、残りは生活の厳しさから脱落する。なかなか増えない留学生の数に、文部省は言語や文化の壁を原因と考えているが、経済格差に起因する住み難さの方が問題だ。

 あるいは卒業後の就職における門戸の狭さから日本への留学を躊躇しているのではなかろうか。

 アルバイトにうつつを抜かすことはけしからんという声が従来からあるが、結果、生活力があり向上心のある留学生は、日本より自由闊達な米国に向かう。

 IT革命などと宣言しても、世界の優秀な若者が日本に向かわない限り、新陳代謝が起こらない。国家が高齢化し、衰退する前にサポート体制を充実させたい。