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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年10月23日付
こちら情報局

FedEx

 香港への出張で、日本と同じコマーシャルが流れていることに気付いた。例のFedExのテレビCMであり、筆者のお気に入りの一つでもある。海外拠点からの荷物のデリバリー状況に関する問い合わせに、女性社員の声を真似て時間稼ぎをしつつ、コンピュータで先方が受け取ったことを確認し、自声(男性の声)で危機を乗り越えるのだが、最後の最後に裏声で「どういたしまして」との落ちがつく奴だ。

 香港では、まったく同じシチュエーションで、上司役の方はちょっとしたハンサム・ガイ。同じように裏声を使って、周囲を驚かせていた。

 個人的な感想だが、日本で流れている奴がなんとなくアジア的であり、香港で流れているのはアメリカ的なイメージであると感じてしまった。

 もしかすると、CM政策サイドに逆説的な意図するがあるのか、或いは社会の縮図として普遍的に求められているものを再現したまでなのかは定かではない。しかし、同じアジアでも、企業イメージや上司像を訴求する上でのポイントが異なることを再認識する瞬間でもある。

 さて、このFedEx、実は、香港でもう一本CMを流しているのだが、こちらはまったくしゃれにならない。「雨に唄えば」の軽快な音楽にのり、大雨からやがて洪水になってしまった配達先の軒先に、塗れないようにと高々と持ち上げた大荷物を、同社社員が届けるというもの。

 報道等でご存じの通り、現在香港の主権を有する中国では、洪水の被害で二千人以上が亡くなり、二億人以上が被災している。 日本であれば、目くじらを立て、放映中止に追い込まれる事態となるところだが、一国二制度を尊重する中国当局は意外と寛大である。