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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年11月20日付
こちら情報局

沖縄知事選

 沖縄の将来に強い関心を持ったのは「戦後50年の夏」。終戦記念日前後に出る雑誌の多くが広島や長崎を取り上げるなか、六月に決戦を行った沖縄の惨状を八月にもう一度取り上げられないかと連載中の経済誌にかけ合い、「日米安保と戦後五十年の沖縄」と題する論文を書き上げた。

 当時担当のコラム「ワールドトレンド」は世界情勢をテーマにし、筆者はアジア分野を担当していたため、アジアと沖縄の関係を取り上げた。「国際都市沖縄」の重要性に二回程言及させて頂いた。

 その間、あの忌まわしい「少女暴行事件」が発生。本土のメディアがこぞって沖縄の窮状を取り上げ、ようやく少しだけ「沖縄問題」が動くのではと期待したものだ。

 その後の経緯はコメントすまい。気が付くと知事選では接戦の末、保守陣営が六年ぶりに政権を奪取。落選直後の大田陣営の悲痛な表情が画面に映し出された。

 翌日以降の在京メディアの論調は基地と経済をコインの裏表に例え、基地問題が一歩前進するとの希望的観測を流している。しかし、恐らく三年前に翻って、当事者が膝詰め談判をしなくてはなるまい。

 気になるのは基地問題以外の経済振興のこと。沖縄側は自立再生の前提が基地の移転と縮小であり、基地跡の再開発を期待しているようだが、世界にある島嶼の財源を調べてみると「観光」以外に「キャプティブ保険業法」なるキーワードが浮上してくる。

 キャプティブは一般事業会社が同保険業法を導入の諸外国で保険子会社を設立し、保険コストの削減とリスク管理に関する意識改革を目指すもの。金融自由化が進展するなか、日本でもようやく脚光を浴び始めた経営戦略である。日本企業が諸外国に進出し、国内空洞化を誘発するならば、沖縄に同保険業法を導入しても損はない。