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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年12月4日付
こちら情報局

ピザの値段

 アップルコンピュータ社が発売したiMAC(アイ・マック)が好調だ。スケルトンタイプのユニークなデザインは、無機質だったコンピュータを生活に溶け込ませようとするユーザーの購買意欲をいたく刺激している。ヒットの理由は、デザインばかりではない。マック・フリークのノスタルジーを刺激しつつも、「羊の皮を被った狼」宜しく、ようやく処理速度で「ウィンドウズ+インテル・マシン」に追いつき、更に追い抜くパフォーマンスを実現したのだ。これまでだいぶ肩身の狭い思いをしていた筆者も、ほっと一安心。

 ところで、マーケティング上、気になることが少々。テレビCMで『ピザ料金が3000円、iMACは月々2300円で楽に買える』と連呼していることである。CMの最後に『箱から出して直ぐにピザよりホットな毎日が始まる』とあるように、iMACの手頃感をアピールしているのだが、ここには表現上のトリックが存在する。

 CM通り『月々2300円で、毎日が楽しくなる』には、上限20万円のローンを最長36回払いで組む必要がある。さらに、ボーナス月には20000円加算される。比較されたピザで言うと、6月と12月に7回分のピザを我慢することになる。うーん、ちょっと大げさだなぁ、そのうちピザ業界が反論のCMを流したらどうするのと同情する。こうなると異業種間での新しい比較広告の誕生である。

 アップル社は1%の低金利をピザで表現したのだが、ウィンドウズ採用の日系コンピュータメーカーならば、5%消費税還元セールを期間限定で採用したらどうか。早い者勝ち、やった者勝ちである。

 これが成功し、更に多くの業界で還元セールを実施すれば、消費税が撤廃されたのと同じ効果も出てくる。世紀末の「ええじゃないか運動」である。