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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年12月18日付
こちら情報局

イルミネーション

 人恋しい季節が到来した。やや古くて恐縮だが、石田あゆみの「ブルーライト横浜」状態だろうか。街の灯かりがとても綺麗なのである。

 この季節、まず思い出すのは、神戸で繰り広げられている「ルミナリエ」。震災後の神戸で犠牲者の鎮魂と復興を願い、住民に活力が戻るようにと九十五年暮れから始められたイベントである。四回目の今年は、見物客数が当初の四倍弱の四百万人に増加すると見られ、「光の彫刻」の経済効果は五百三十七億円と言われる。

 さて、同じ時期に東京では、原宿・表参道ケヤキ並木がイルミネーションで飾られる。こちらはもう少し歴史が古く、九十一年にパリのシャンゼリゼにあやかり、十二月中旬からクリスマス当日までの十数日間にわたり三十九万個の電飾が点灯している。

 しかし、原宿の方は、今年に限っては、一体どうなるかと関係者をヤキモキさせている。周辺住民の一部から、騒音やゴミなどへの苦情が殺到。改善の目処がたたないため、裁判所に設置済み照明類の撤去の仮処分申し立てが行われている。いまのところ、見切り発車というか、裁判所の裁定が間に合わず、ひとまず12月12日に点灯された。が、状況によっては、クリスマス・イブあたりに真っ暗ということも予想される。

 確かに例年、この時期はライトアップされた樹木を見物する人の波で一帯は騒然となり、翌朝はゴミの山に埋もれる。車の排気ガスも相当なものであり、タクシーなどは迂回しなければ、見物渋滞に巻き込まれ、商売上がったりの状況になる。

 「野暮なことを言わずに」と言いたいところだが、感動を味わい、豊かなコミュニティを持続させるには、見物に行く私達個々人の心遣いも重要だ。