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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年6月4日付
こちら情報局

女性・29歳

 マーケティング(商品やサービスを売るための各種技法)の世界では、「顧客データベース」や「ワン・トゥ・ワン」という考え方が支配的である。コンピュータを使って、時代とともに変化する消費者の細かなニーズに迅速に且つ一対一で対応し、商売に繋げようとする発想である。

 特にインターネット時代を迎え、インタラクティブ(双方向)に情報のやり取りが可能になってきたため、企業担当者や専門家は、如何にして効率的な営業展開をするかという立場からの基礎データの収集に余念がない。

 例えば、懸賞広告などでは、応募者の特性を細かく聞いて、そのかわりに謝礼として一定数の人にテレホンカードを渡すなどの方法でデータが収集されている。

 若い女性を対象にしたものでは、「映画の試写会」へのご招待などは人気が高いのだが、最近面白い話を知人から入手したので紹介したい。

 仮にA子としよう。都内在住の彼女、実年齢は30を越えているのだが、そこは女ごころ。応募ハガキの年齢欄には「29」と記入し続けた。四捨五入すれば、どちらも30。特に気にもかけていなかったのである。

 ところが、最近さっぱり当たらなくなった。引っ越ししたこともあり、年を一つ重ねたので、そろそろ「30」にするかと、サバ読みをやわらげてからのことである。

 行動派の彼女は、元の住所を書いてみたり、趣味の欄をいじってみたりと、彼女なりの「逆マーケティング」を決行した....。

 ここまで書けばおわかりだと思うが、年齢を29に戻したとたん、また当たりだしたのだ。そんな馬鹿なと思われるだろうが、20代と30代の境界線としての29歳は、企業側にも応募側にも美味しい数値らしい。