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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年10月8日付
こちら情報局

東海村原子力事故

 茨城県東海村の放射線被曝事故は、当の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(旧日本核燃料コンバージョン)」の社長がマニュアル通り(?)科学技術庁を訪れ長官に陳謝した。

 しかし、「裏マニュアル」の存在が指摘され、警察による家宅捜査が行われるなど、組織ぐるみの「犯罪」のにおいが強くなった。

 事故自体は沈静化したものの、今後補償も含め、経営リスクが重くのしかかることが予想される。ここでは、事故の再発と類似事故の防止への、問題提起を行いたい。

 一つは、社名変更が昨年行われた理由をもう少し注意深く分析する必要があるのではないかということだ。

 親会社のホームページには、平成十年八月に「事業拡大」を目的に名称変更をしたとの記述が見られるが、外部から名称変更の本当の理由を知ることは出来ない。

 仮に「核燃料」に象徴される危険なイメージを払拭し、「業務」への「一般従業員」の雇用を容易にしたい(ロンダリング的な)意図があったのなら極めて遺憾だ。

 同様の危険物取り扱い企業では、マニュアルの強化や改訂以上に、従業員が自らの作業内容や業務の重要性を理解するための「企業名の再検討」と「企業理念の再構築」が必要となる。

 もう一つ指摘すべきは、世界的な価格競争が激化し、無理なコスト削減、効率的経営が現場に求められたのではないかということだ。

 その根本には、政策として『原子力エネルギーは効率的且つクリーンである』ことが強調されすぎたという問題がある。

 今回の事故を見る限り、根拠や前提が崩れ、民間企業では維持できないのだから、政策を見直す機敏さが政府には求められる。理由はともかく初期対応は遅れに遅れた。政府の巻き返しを期待する。