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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年10月29日付
こちら情報局

キルギス人質解放

 キルギスで日本人技師四人を含む人質が解放された。

 今回の件、無事生還できたことに安堵感を覚えるとともに、関係者の2ヶ月にわたる交渉への尽力、さらには不安な日々に耐え続けた家族にも「ご苦労様」と一言添えたい。

 が、一連の事件は海外に暮らす日本人に更なる脅威を与えることであろう。最終的な目的が「金目当て」だったのか「政治目的」なのかは定かではないが、改めて「日本人」が商売の材料になることが確認された瞬間でもある。

 民間企業の従業員とは言え、人質にされた彼らは外務省の外郭団体であるJICAを通して派遣された「民間外交官」でもある。

 現地での適切な判断のための緊急時システムのあり方については、事件解決をきっかけに更なる精査が期待されるが、一方で「国際貢献」に対するわが国のスタンスが曖昧なままでは、「システムの高度化」によっても回避できない「予期せぬリスク」が存在し続けることになる。

 さらに、日本の国際貢献の一貫として派遣された技術者ではあるが、他国のエネルギー探索の手伝いをしていたその背景には、貢献の暁の民間企業の「商売への期待」があり、「幾分かの冒険への妥協」もあったはずだ。

 実は同様のことは、国際貢献を主たる目的とする幾つかの機関の内部にも存在する。若い時に苦労をし、実績を積むことで、将来の正式採用、安定的地位への道を約束するというものである。

 その国際貢献には、今の幹部諸君が「外遊だ、海外だ」と「冒険」した当時とは比べものにならない程の「リスク」がつきまとい、冷戦以降の複雑な民族問題が絡む地域にしか「国際貢献」の余地が残っていない。派遣される側へのリスクの公開と説明が望まれる。