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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年11月12日付
こちら情報局

リストラ待った!

 日産自動車のゴーン氏が2万人のリストラ策を誠意?あるカタカナ日本語で宣言したとたん、日本企業も負けじと「万単位」のリストラ計画を相次ぎ発表。

 リストラとは言うものの、所詮は首切り、解雇。会社のためとは言われるが、その先の家族の生活はどうしろというのか。

 バブル華やかかりし頃、日本のサラリーマンは「終身雇用だから」とボーナスを極力抑えられながら、身を粉にして働いた。そして今、その企業に棄てられている。

 ゴーン氏にしても、来年の黒字目標未達ならば即辞めると言ってはいるが、どうせ「ニッポンハ、トクシュデシタ」と言えば彼の経歴は無傷なのではないか。

 それに、バッサバッサと人切りをして、経営を立て直したって、そんなの当たり前だと言いたい。

 もちろん、彼のやっていることの多くは、経営戦略上は常識である。むしろ、彼の言葉に耳を傾け、嬉しそうに頷く同社の幹部諸君には、「一体何人のMBA留学生を欧米に送り込み、何を学んできたのか」と問いただしたい。

 経営に責任を持つ日本人トップにしても「時期が来れば即刻辞める」ようなきれい事を言う前に、「初任給で頑張る」姿勢があっても良いのではないかと考える。

 日産自動車については、ファーストランナーとしての気概も含め、まだ理解可能だが、どさくさ紛れに「わが社も今がチャンス」とリストラを発表した企業は一体何を根拠に人数を弾いたのだろうか。

 リストラは諸外国では常識と言われても、そもそもの社会構造や文化が日本と異なることは、『文明の衝突』を読まずとも日本人なら理解しているはずだ。

 十分な雇用流動性への諸制度を整備する時間を確保せずに、このまま藩主の暴挙が横行すると世紀末の百姓一揆が必ずや起きる。