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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年11月19日付
こちら情報局

都知事訪台

 就任以来、「慎太郎節」で押し通しているので、これは期待できる、何かするぞと思っていたら、それこそ「あっっ」と言う間に台湾を訪問、李登輝総統との謁見を実現してしまった。

 筆者が台湾出身だから「こうした行動は喜ばしい」というのではなく、純粋に一都民、あるいは日本に永住する者として、都知事の行動力とその意義について考えた。

 結論から言えば、都知事の訪台はこれまで日本全体に蔓延していた国家主導のピラミッド社会からの脱皮のきっかけとなるだろう。

 二十一世紀に向けアジアとの連携が重要だというのは誰しもが賛同し、理解していることである。が、早くから先進国の仲間入りを果たした日本が、国として協力できることはないかと出かけていけば、「金銭面でご支援を」と要求されるのは至極自然なことである。

 古くは日本も含め、アジア諸国は「成功したものが後輩に施しを振る舞う」ことを是としているわけだから、何もその行為自体を批判しているのではない。そうした支援も継続することが必要なのだろうが、何せコラボレーションというのだろうか、拡がりがない。

 お互いに知恵を出し合い、技術を出し合い、労働力を出し合う中での共同作業が「新しい何か」を生み出すからだ。

 これまでの雁行型の経済発展を打破し、パラダイムをシフトさせるにはどうすべきか。同等規模の財政状況を一つの根拠とするならば、それこそ自治体レベルでの協同、ネットワーク化を積極的に図ることが望まれる。

 知事は就任当時から様々な機会を捉えて「東京の可能性」と「リーダーシップの発揮」が日本を改革すると力説してきたが、真意がなかなか理解されない。横田基地の軍民共用、ASEAN諸国との近距離航空機開発など事例は多い。