トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年12月3日付
こちら情報局

FA宣言

 「ああ、ダイエーの工藤投手かベイスターズの佐々木投手の話ね」というあなた。はずれ。サラリーマンのFA宣言だ。

 ま、サラリーマンにも「FA資格」があっても良いのではというのが主旨である。

 「なんだ、転職の話か」「FAの前にリストラで危ない」などとと言わず、まずは読んで欲しい。

 中途採用が前提となり、労働市場が流動的になると、職種によっては、企業よりも個人のリスクが大きく、使われ放題となりそうな傾向が強い。ならば、どこかでロールモデルというのだろうか、「成功した暁」を示すことが重要になってくるという問題提起である。

 年俸制、労働裁量制が普遍化しても、今のところ、サラリーマンの「上がり」は登りつめて経営層に納まるか自らが起業することしかなく、野球選手で言えば、監督になるか、自分の野球チームをもう一つ創るようなものである。

 これでは、あまりにもパイが少なくないだろうか。もちろん転職も可能であるが、どこか後ろめたく、これまでの組織を裏切る、組織になじめなかった、やり手などと残留組からは嫉妬と批判の嵐にさらされる。

 で冒頭の話に戻れば、新卒で就職し、おおよそ6年が経過した二十八頃になると、むずむずしだす年齢にさしかかる。そこから転職し、十年が経過した三十八から四十ぐらい、中途採用されてから十年経過した人にはFA宣言の資格を与えても良いのではと考える。

 もちろん人材は限られるが、「当社自慢の社員、転職してきてこんなに立派になりました」「この社員お奨めですぜ」とFA資格を与えるのだ。やがて到来する労働力不足の中で「人を育て、すんなり卒業させてくれる企業」として、次に続く若くて向上心を持った人材の獲得には不自由しない。