【映画】セッション


7.映画セッション2

セッション。

 

若手ドラマーの話。

 

人間誰にでも向上心があるが、世界的なトップレベルになるには、

ものすごく努力するのと、指導者に認めてもらう。

大御所からの伝承者としてのDNAのおすそ分け(師弟愛)が必要となる(と言われる)。

 

 

1万時間の努力を小さい頃から重ね、ようやく名門音大のスタートラインへ。

そこから偉大な音楽家になるための、記憶に残るための、さらなる努力が求められる。

まさに、血のにじむような努力が待ち受けている。

 

単なる浪花節のストーリーではなく。

波乱万丈の人生の、ジェットコースターのような。

そうした青春時代を通し、やがて成長し、真の継承者、伝承者が生まれる。

しかし、現実の世界では、その師匠を乗り越えないと、たどりつかない世界。

 

いつ仕掛けるか、いつ仕掛けられ、その梯子を外すのか。

いつまでも現役で居たい師匠と、どこかでその理想像を壊し、自らが君臨すべき時間軸が迫る。

 

先週観た、映画「バードマン」http://www.linsbar.com/e2/?p=1185

が、中高年の悲哀、さらなる飛躍へのもがきであるのに対し、

映画「セッション」は、若者の「下剋上」の、そして、プロフェッショナルとは何かを学ばせてくれる。

 

映画「バードマン」は、バードマンとして完成されているが、何か「音楽的な」不完全燃焼があった。

たらふく食べたはずの一次会(和食、熟成肉)があまりにも美味しく、もう一軒行くかというときに、

映画「セッション」が、二次会(洋食、イタリアン)として、完璧に補完しあう。

 

観たあとに、武者震いした。

それは、書籍「メディアモンスター、誰が黒川紀章を殺したのか」http://www.linsbar.com/e2/?p=1214

のあの気迫に通じるものがある。

 

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追記:

この映画。

あの、サンダンス映画祭で受賞。

なるほど、「レザボア・ドッグス」「ブレア・ヴィッチ」「ヘッドウィグ・アンド・アグリーインチ」…の正当な後継者だった。

監督は。無名の28歳。19日間で撮影。

「セッション」の主人公の掴み取ろうとした、あのハングリー精神は、監督そのものであり、周りを囲むスタッフは、あのバンドのメンバーそのものだったりする。

劇中劇を見ているようだ。

 

 


【書籍】メディアモンスター、誰が黒川紀章を殺したのか?

6.黒川本

「メディアモンスター、誰が黒川紀章を殺したのか?」/ 曲沼美恵/草思社/2015年4月15日/2700円

 

黒川紀章氏は、建築家というより、芸術家、思想家としてのイメージがある。

本人は、博士号を取得していないが、「社会工学者」であれば、取っていたと豪語する。

 

 

 

 

大学院在学中、まだ具体的な構造物が完成する前から、オフィスを立ち上げ、メディアに登壇。

以降、注目を集めつつ、晩年に都知事選に立候補するなど、常に脚光を浴び続ける。

 

「下剋上」「仕事の鬼」。「伝統と体制への挑戦」。

気が付けば、自らも大御所になり、煙たがれる存在に。

仕事一筋に、部下への言動は冷淡と称されたが、いつまでも子供のまま、奇想天外に。

ユーザー(大衆)の懐に飛び込んだ。

 

30年前の概念が、今を生きる。

師匠の丹下健三が背骨のある構造物、日本列島の設計を目指したのに対し、

「ノマド」「(生物学的な)共生」を早くから提唱。

時代は、まだ、その遺言に追いついていない。

 

誰が、黒川紀章を引き継ぐのか。

建築家は、姿を消すのか。

東京オリンピックの誘致に反対し、遷都による東京の再生を描いていた黒川紀章だが、

2020年の東京をどう見つめているのか。

春の嵐の東京。610ページの対策を読み終わり、感動すら覚え、武者震いした。

 

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「上の上」の世代の、60年~80年を知ることにより、

90年~2000年代に関わった様々な仕事、出会った人物の過去を振り返ることが出来た。

ああ、政界・財界の、あの人は、過去のあの業績があり、あの発言をしていたのか。

 

読んでいて、似ている部分があるとも感じた。

僕は、自他認める「じじい殺し」だったが、気に入られる「ツボ」があった。

「場」や「空気」を読まない。いわゆる「嫌われ覚悟」「誤解覚悟」で「一期一会」を目指す。

誤解されても良いので、「真の友人」、「真の師匠」を得ようとした。

誰もが怖がる「仕事師」「鬼」は、寂しく、その懐に飛び込むには、下手な動作は嫌われ、見透かされる。

 

日々の仕草でも、同じことをしていた。パスポートのサインは、漢字を横にした。

真似したのではなく、中学生の頃にやっていたので、同時期の発案かもしれない。

(もっとも、将来偉くなるからと自分で勝手に決めて、授業中に崩し文字をデザインしていたが、

もっぱらクレジットカードに署名するだけである)(笑い)

 

オフィスの回し方。「卒業」の概念で、面倒を見る…。

書生を経験し、研究室を飛び出すと、ああいう発想になるんだろうとも思った。

黒川紀章が関わったあの筑波万博の、あのパビリオンを徘徊し、僕は、自分の大学院での進路に悩んでいた。

 

思わぬ成果もあった。

メタボリズムの形成過程。

大阪万博、愛知万博、都庁コンペでの葛藤。

 

小さなオフィスから、だんだんと組織が拡大するなかで、大所帯を回す「ワザ」。

社員は、部下ではなく、お弟子さんであるところ。

45才を越える頃、進路に悩み、次の階段を上るために、挑む壁は何か。

晩年、選挙活動での奇抜な選挙カー、派手な立ち振る舞い。

 

マクルーハンの解説。

建築やデザイン、都市形成を考えるものだけでなく、

メディアやコミュニケーション、ICTやウェブデザインのプロにも薦めたい。

自らの仕事、生活、人生に向き合うための、永久保存の一冊であり、アナログ(紙)で読みたい黒川紀章と対話すべし。

 


【書籍】「パナソニック人事抗争史」

 5.松下本

「パナソニック人事抗争史」岩瀬達哉 / 講談社/2015年4月1日第1刷発行/1380円(税別)

 

岩瀬達哉さんの本なので、速攻で購入。

週刊現代の連載と追加取材からなる。

実名飛び交う。

あとがきの「そういうことだったのか」。まさに。そういうことだったのかぁ。

 

 

松下幸之助さん(創業者)の娘婿の正治さん(2代目社長)と、

改革派の山下俊彦(3代目社長)、さらに改革を続けた谷井昭雄(4代目社長)。

谷井社長の下に居た4副社長。彼らの退任。

松下家の忠臣。イエスマンの森下洋一(5代目社長)。

V字型カッターの中村邦夫(6代目社長)。

プラズマをさらに推進してしまった大坪文雄(7代目社長)。

ようやく、大政奉還を果たしたのか。津賀一宏(8代目社長)が就任したのは、2012年6月。

 

まるどめ(5代目)、プロサラリーマン(6代目)、イタコナ(7代目)。

 

冒頭の「山の上ホテル事件」から、一気に引き込まれる。MCAの買収売却。

ああ、あのとき…。もったいなか。

 

一気に読了。

「ルーツ」という西アフリカのザンビアから米国へと向かうクンタキンテ少年からの三代の長編のドラマを想起した。

 

(追記:そういえば、この人事抗争は、ソニーのに似ている?)

(追記2:シャープの迷走は、対極の液晶で起きているので、どの選択肢が正しかったのかは、謎ではある)

 

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僕とパナソニック。多少の行き来がある。

松下電器の本社には、98年だったか、招かれ、IT戦略などの話をしたことがある。

東洋経済で、「インターネット企業戦略」(1998年)を上梓した直後である。

当時は、ネットとか、ホームページとか、コミュニティの話をした。

その後、数回通い、なんどか、役員に経営戦略、事業戦略の話も、踏み込んで。意見交換した。

 

(長い廊下の先にある役員食堂は、とても質素で、さすが松下幸之助と、大変感銘を受けた)

(それに輪をかけ、質素だったのは、近くにあった「三洋電機」でした)

 

松下電器とパナソニックと、ナショナルと。それらブランドの統一、

出来たらパナソニックを使いましょうみたいな話もしたと思う。

(当時は、正幸氏が副社長に就任し、どうするかくすぶっていた)

僕的には、創業家へ誰が鈴を付けるかに興味があった。

 

当時は、経理の松下と思っていたが、この本を読んで、もっと複雑だったことが解る。

某戦略部門への提案は、動く様子もなく、その後、官庁向けの別プロジェクトが多忙になり、疎遠に。

(本を読んで、行間を類推。そうだったのかぁ…)

 

やがて、V字回復のコストカッター。

(僕には、日産のゴーンさんの写しとしか見えなかった)

旨く行くはずがないのだが、まんまカラまわる巨大組織。

 

時を経て、2008年、ようやく重い腰を上げ、パナソニックへ。三洋電機の完全子会社化。

(提案から10年が経過していた)

三洋電機を取り込んだと発表した直後、別件で、三洋のエネルギー担当の役員と意見交換したことがある。

役員は、自身は身を引く、部下(部長)が引き継ぐ。顔一つ表情を変えなかったが、その役員の背中には、怒りがにじみ出ていた。

 

もう一つ、同時に取り込んだ「松下電工」。

若い頃(金融工学に居た90年代初頭)に何度か「人工知能分野」で世話になった「松下電工」の役員(当時部長、再会時は、副社長)は、巨象に呑まれこまれながら、ものづくりの効率化(開発スピード、コスト削減、一体開発による期間短縮)などで、指導力を発揮した。

僕は、密かに、この電工の彼が次のトップに付いたら、松下も凄いのにって、思っていた…。

(そうだったのかぁ。この本を読むと、そんなことは夢のまた夢ではある)

 

パナソニックの復活(あと、ソニー)は、日本の復活でもある。

ウェアラブルで元気感が出てきたのは、津賀社長(8代目)が「普通の会社」「風通し」を意識したからかもしれない。

最近、発表された「球体の送風機 Q 」には、そういうメッセージがしたためられているのかもしれない。

あきんどの神様の、社是社訓。原点に戻り、社長、会長への「ホウレンソウ」、トップが手に取るように解る組織。風通しには気を付けたい。

 

ご参考:創風機 Q (パナソニックプレリリース、2015年4月3日)

http://news.panasonic.com/press/news/data/2015/04/jn150403-2/jn150403-2.html

 


【映画】バードマン

4.バードマン

映画 バードマン。

 

かつてヒーロー役で、一世を風靡した主人公。

よりによって、ブロードウェイで文化的な香りを引っ提げて復活したい。

有り金叩いて、脚本・主演の最後の大勝負に出る。

プレッシャーは、マックスに。

 

 

 

邪念であるバードマンが囁く。妄想とも現実ともつかない世界。

マスコミからの容赦ないプレッシャー。

出演者らの複雑な人間関係。

えげつない駆け引き。

売れるためのマーケティング。

SNSなどネットでの評判(バーチャル、未来志向)が、実績(リアル、過去の栄光)を上回る瞬間。

 

一生懸命に生き抜こうとする主人公の姿は、出口の見えない若者、過去の栄光が風化していく中高年、

子育てに明け暮れつつも、いつかは職場に戻り、自己実現したいママらに、勇気を与える。

米国での社会問題を、日本の潜在リスク(イシュー)に置き換えると、光が見えてくる。

 

テクニカル的には、長尺で、一気に撮っている。

そのための緻密な計画と撮影技術。

劇中劇のようなストーリー。映画好きだと、ふふふとなる風刺(パンチ)が効いている。

テーマは悲惨だが、コメディーで仕上げている。

安心して見られる。おススメの一本。

ビジネスヒントも満載だ。

 

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<ご参考>

 

(1)映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』日本版予告編

https://www.youtube.com/watch?v=_XOBBmyYNJA

 

(2)Gnarls Barkley – Crazy  (予告編主題歌のグラミー賞での熱唱)

https://www.youtube.com/watch?v=yA36wU4jgj4

 

(3)Gnarls Barkley – Crazy(墨絵風の動画)

https://www.youtube.com/watch?v=bd2B6SjMh_w

 

(4)Gnarls Barkley – Crazy(予告編の後半に使われたアルバム音源)

https://www.youtube.com/watch?v=Qe500eIK1oA

                                                                                                                                                            

 


【隠れ家】ぼったくりバー

3.ぼったくりバー

人生初。

ぼったくりバー。

 

別に新宿とか池袋の繁華街に行った訳ではなく。

お洒落な街の、大通り沿い。

 

気が付いたら、あれ、ちょっと高かったかなーーって。

 

 

 

最近行きつけの和食屋さんで、このあたりの呑める店の話をしていた。

そしたら、その普通に見える、ちょっとだけ派手な、それでいて駅近くのバーの話に。

 

ひっそりと佇むわけでもなく。

3杯ぐらいモルトウィスキー飲んで、頼みもしないプチ豪華なお通しがあって、8000円。

少し飲みたかったのと、少し酔っていたし。あれっと思ったけど。

念のため、領収書貰って。(証拠として)

ママさんが、外まで送ってくださり、握手までした。

 

その話を行き着けの和食屋さんでしたら、

「あーー。そこは有名なぼったくり―バーです」「幾ら取られました」

「8000円。税込」

「それならば、マシなほうです」「だいたい8万円」「良く警察沙汰になります」

念のため、もう一軒、聞いたら、同じくそこは8万円と。

 

話は、ここで終わらずに。

行き着けのカフェ。椅子を一つ置いて、もう一人の常連さんと。デザイナーの方。

普段飲むところの話になり。そのバーの話に。

「そのとき、たまたま12万円持っていて」「もう少し飲みたいって入って」「どういう仕事か聞かれ」「8万円」

やはり8万円だ。

 

ぼったりバー。

僕は、そのママさんに気に入られたのか?

ぼったくり―バーって、全員からぼったくらないのか?

 

そのバーは、ずーーとオープンしているし、クレームあるけど、本人らは、適性価格って、思ってるかも。

僕も最初に、一杯8000円のがありますよって言われ、酔っているから良いですと遠慮した。

で、安いものが出てきた(年代の若いもの)。

25年ものを散々すすめられたが、かつて持っていたので。

写メをする癖が助かったのか。バーの店の中の全景とか、撮っていた。

 

クライアントの某部長に、「ぼったくりバー行きます?」って聞いたら、かなり引いていた。

ほら、知ってて入ると、怖さは2倍。ぎりぎり、8000円で出られるか。

黒ひげ危機一髪みたいな。

ぼったくりバー。今日も、きらびやかに、鎮座する。